ガチガチの理系だけどMBAのテキストを読み始めてみた4 | スティーブン・P・ロビンス著「組織行動のマネジメント」

 

約一ヶ月ぶりのシリーズ続編である。(前回の記事↓)

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ヘビーだけど、組織づくりで役立つメソッドが豊富

前回まではエッセンスをかいつまんで、実話を織り交ぜながら分かりやすく説明していく、という形式のテキストが多かったのですが、本書はかなり「堅い」一冊でした。

教科書的な文体に加え、「こういう理論・モデルも多いが、こういう批判もある」というような、総説論文にも近いスタイルだったので、読み進めるのにかなりエネルギーを消費させ、初心者には難しいという印象が強かったです。

 

それでも、冒頭で「対人関係スキルを開発していく手助けをするために書かれた」(第一部)とある通り、根底にあるのは部下をどのようにまとめあげ仕事をすすめるか、という点で一貫しています。

 400ページ以上あり、内容をすべてまとめていくととんでもない量になってしまうので、今回も特に強い印象を受けた内容をピックアップしました。

 

「職務満足感」と「生産性」、そして「組織市民行動」の関係

生産性の向上が職務満足感を与える

職務満足感は、精神的なやりがい、公平な報酬、支援的な作業条件、同僚の支え、で決まることが分かっているといいます。

そして、昔(1950年代まで)は、職務満足感が生産性の向上につながると考えられていて、今でも素人考えではそれが正しいと思えるのですが、実は逆で、

生産性の向上が(やりがいを感じさせることで)職務満足感の向上につながっている、という見方が強まっているそうです。

つまり、満足度と生産性の因果関係は、直感と逆になっているのだ、と述べられていました。

 

生産性を上げたい、と考えた時、単純に報酬を上げたり、職場環境を整えたりするだけでは不十分で、より根本的な対策が必要になってきます。

現代の日本は、働き方改革が叫ばれて久しいですが、一辺倒なやり方では改革は達成できないだろうな、と考えさせられました。

 

自治的な活動が生まれる条件

組織市民行動とは、他のメンバーの支援や。業務以外の活動への参加、組織な対する建設的な意見、といったものであるそうです。

換言すると、「良い組織内で行われる、理想的な自治活動」というようなイメージでしょうか。

 

組織市民行動が増えるのは、職務満足感が高い時なのですが、中でも「公平な報酬」に対する満足感が守られている時のみであるそうです。

これが守られていないと、組織な対する信頼感が無くなり、組織市民行動を起こすモチベーションが失われてしまうのでしょう。

 

具体的な目標による管理

ドラッカーが提唱した手法の一つに、「MBOプログラム」という、目に見える形の、達成可能な、測定できる目標を設定し、定期的に評価する方法があります。

トップから現場まで、共通した目標を、それぞれの業務内容に合わせた形で共有できる、という利点があるのですが、

共有長期的な目標達成を重視する場合は難しく、富士通はこのプログラムを廃止したそうです。

 

大学の研究室でも、研究成果の数値目標を設定するところもあるという話を聞いたことがありますが、

実用化研究ならともかく、基礎研究でこれを導入すると研究がおかしな方向に行くことが多いのではないかと思います。(例えば、目標数値を達成するために、本末転倒な実験系を組み始めるとか)

 

集団に参加するメリット

個人が集団(組織)に参加するメリットとしては、安心感、ステータス、自尊心、親密さ、力、目標達成が挙げられます。 

組織で働くことのメリットと聞いて、以前読んだ「社内政治の教科書」を思い出しました。この本は具体的(というか生々しい)話が多く、組織で働くメリットを理解しやすくておすすめです。

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グループとチームの違い

意識したことがなくこれらの単語を使っていたので、ハッとしました。以下のような違いがあるそうです。

 

グループ:個人それぞれの目的を達成するのを互いに助け合う集団。集団作業の必要も機会もない。

チーム:協調を通じて、個々人の努力は、個々の投入量の総和よりも高い業績になる。

 

さらに、チームには以下のような分類が可能だと言います。

  • 問題解決型チーム:初期(80年代初め)の形。同じ部門のメンバーから構成され、特定の問題を解決するためのチーム。
  • 自己管理型チーム:メンバーが、より大きな業務を独立的に遂行し、上司がその責任を負う。フラットな組織ということか。階層的な権威を尊重するメキシコではうまく機能しないらしい。
  • 機能横断型チーム:異なる部門から少人数ずつ集められ、開発などに取り組むチーム。タスクフォースと呼ばれるのはこれ。シンゴジラの巨災対みたいな感じかな。
  • バーチャルチーム:直接顔を合わせず、オンラインで協働作業を行う。場所などの制約を受けにくい一方、対話プロセスへの満足度が低い。

言われてみると、確かに、と納得できる分類方法です。

ひとえに「チームを組む」と言っても、いろいろな組み方があるのですね。

 

リーダーシップについて

現在最も尊重されているリーダーシップ理論は「パス・ゴール理論」。

リーダーの職務は、メンバーの目標達成(ゴール)を助ける(パスを出す)ことである、というのを基本としている理論だそうです。

環境に応じて、「指示型リーダー」(グイグイいくタイプ?)と「支援型リーダー」(サポート役に近いタイプ?)で、それぞれ有効なリーダーが変わってきます。

 

組織のシステム

組織構造をデザインする時(果たして僕にそんな機会があるのだろうか)、6つの要素を軸に考えるのがセオリーだそうです。

  • タスクをどこまで細分化するか ▶ 職務の専門化
  • 細分化する際の基盤をどうするか ▶ 部門化
  • 誰に報告するか ▶ 指揮命令系統
  • マネージャーが有効に指揮下におけるのは何人か ▶ 管理の範囲
  • 意思決定の権限は誰が持つか ▶ 中央集権化/分権化
  • どの程度の規則や規制を課すか ▶ 公式化

 

特に「管理範囲」(1人の上司が何人の部下を受け持っているか)の考え方は面白く、

①管理範囲人数②組織階層の数③従業人数 は互いに関わっているとのこと。

例:管理範囲が4人で、組織階層が7つ(トップは社長1人)の場合、4^(7-1)=4096人が従業員数となる。

 

なので、企業分析の際、組織図と従業員数から、管理範囲を推定する、といったこともできるかもしれませんね。

 

人ベースの仕事ベースの組織

そもそも組織のでき方には、以下の2通りがあるといいます。

人ベース:人々が組織の中で多様な結びつきを形成することで業務執行の基幹とし、組織横断的な動きを可能にする。

仕事ベース:トップダウンでおりてくる目標を達成する仕事に誰を就けるか、という形で組織が形成される。

 

アメリカは、元々仕事ベースだが、現場層にチーム組織を導入することで人と仕事のハイブリッドになっているそうです。

一方の日本は、終身雇用や異動で、人ベース度合いが高い。ここに成果主義や組織のフラット化が加わり、仕事ベースとのハイブリッドが求められるようになったそう。

会社によって違いは大きそうですが、国によってこんな違いがあるらしいです。

 

まとめ

今回取り上げた他にも、報酬のシステムや、動機づけの理論などがまとめられており、非常にマネージャー・管理職向けの内容でした。(タイトルからして当然)

若造の身としては、ピンとこないことも多いけど、トップやマネージャーがどんなことを考えているのか、その考え方を理解する助けにはなると思います

もちろん、将来この立場になったらもう一度読んでおきたいなと思います。