仕事やキャリアに対して独立心を持てることが、一番の財産だという考え方

働いている人の幸福度を決めるのはなにか

私の周りには、ポスドクをしたり会社勤めをしたりしていて、とても幸せそうな人とそうでない人、両方がいます。

長い間、その違いは何に起因するのかという疑問をずっと抱いていました。

可能性のあるポイントをまとめると、次のようになります。

 

時間的余裕: これは説明できません。暇な人と忙しい人、どちらのグループにも幸せそうな人とそうでない人は同じくらいいます。

経済的余裕: ある程度は正の相関がありますが、一定の水準を超えると、これもまた相関がなくなると感じています。

職の安定: 任期付きポストでも自信と幸福度に満ちあふれている人もいるし、大企業に勤めていてもつまらない日々を嘆いている人もいて、これでは説明できません。

家庭の充実度: これも関係はないと感じています。中年で独身の人でも幸せそうな人も、順調に家庭を育んでいてもつまらなさそうに働く人も、両方います。

 

最近になって、「根本的な違いはここにあるのではないか」というのを感じるようになりました。それは、

勤め先(会社でも大学でも)に依存せず、精神的な独立心を持っている、

ということです。

※精神的というのを強調したのは、副業を持つという意味では決してないからです。

 

従属ではなく独立

肝心なのは、勤め先を「養ってもらう場」「評価されるよう努力しなければいけない場」という従属の意識で捉えるのではなく、

「タスクをこなしつつやりたい事ができる場」「スキルアップの機会がある所」「求められる人材として期待に応える場」という、利害関係が一致する場として捉えることです。

こうした考え方を持っている人ほど幸福度が高い、と実感するようになりました。

 

この考え方を実践するために必要なことは、

今の職場を離れることになっても、次のメシの種を見つけられるよう、十分な実績やスキルを身につけようとする姿勢だと思います。

基本的には、実績を積む=勤め先のニーズに応える という図式が成り立つのですから、このwin-winの関係が構築できるはずです。

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アカデミアに関して言えば、

任期付きポストで働いている人でこのような実績や自身がある人は、

そうでない人と比べて、圧倒的に前向きで幸せそうであるといつも感じています。

そのような人に会って会話をすると、彼/彼女の話しぶりから一目瞭然です。

 

この考え方を支持できるデータとして、神戸大学がこのような調査結果を発表しているのを見つけました。

www.kobe-u.ac.jp

自己決定によって進路を決定した者は、自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられます。

ここでは独立心という言葉の代わりに、自己決定という表現が使われていますが、意味しているものは非常に近いと思います。

キャリア選択だけでなく、就職後も自らの判断で行動することが、結果的に幸福感が高まることに繋がるはずです。

 

また、独立心は転職に対する心理的障壁とも強く関連していると思います。

転職の思考法」という本には、次のような内容が語られています。

  転職が当たり前になれば、選択肢を手に入れた個人はより自由になり、

  社員を惹き付けようとする会社は、より魅力的になる。

実際に転職するかどうかに関わらず、自らのキャリア選択を自立して選択できるようになれば、個人個人の幸福度は高まり、さらに各職場もより良いものとなっていく、と私は解釈しています。

 

原田節雄 著「実録・交渉の達人」を読んで

ここまで書いた内容は、あくまで理想に過ぎず、達成した人をまだ見たことがありません。しかしながら、最近読んだ本の中で、この理想を実現し、仕事の成功に繋げている人の話を発見し、とても驚きました。

著者は、大企業に勤め、QRコードやFelica等の国際標準化に携わった業績を持っています。この本のメイントピックはその標準化の顛末です。

その傍ら、英語とコンピュータのスキルを活かし、翻訳の副業をこなして年間一千万円以上の収入を得ていたと書かれています。収入がその大台に達した時、『妙に自分の能力に自信がついた。会社をいつでも辞められる、という自信だった(第3章)と語っています。さらに、『私にとって、黒いものを白だという必要性はすでになかった』(第6章)と強い精神的な自立を確立されたことが読み取れました。

その自信・自立が、仕事に対する真っ直ぐな姿勢や、人事に対する強気の交渉に繋がっているということが、文章からひしひしと感じ取れました。

国際標準化のストーリーだけでも波乱万丈で十分に読み応えがあるのですが、著者のこのような「働き方」にも強く共感し、目標にしたいと思える話です。

 

独立性は否が応でも求められてくるのではないか

新自由主義が広がる中、働く人の独立性は否が応でも求められる時代になっていく、とも考えられます。

詳細は別の記事にまとめました。

bricolage.hateblo.jp

 

追記:スタジオジブリのアニメーター募集ページ

togetterを眺めていたら、とても面白い求人募集が話題になっていました。

togetter.com

 

2ページ目に書かれている

大切なのはきみ自身の生き方です!!

会社なんかよりきみがすばらしいつくり手になることです

という一文に強く共感しました。

勤め先ありきではなく、自身のスキルアップをまず考えてほしい、ということなのでしょうか。この姿勢も独立心に繋がっているのでは、と感じました。

 

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