海外旅行が恋しいので、高野秀行氏の旅行記を読み耽る。

コロナ禍で旅行に行けない日々が続く…

旅行に行けない日々が続きます。

コロナ禍前は、一ヶ月に一度くらいの頻度で国内・海外問わず旅行に行ったものですが、最近は遠出せずに家の中や近場で過ごすことが当たり前となってしまいました。

近所の隠れた名所を探すのも十分楽しいですが、やはり旅行の醍醐味は遠く離れた地に行って、非日常を楽しむことだと思います。

 

そんな状況下では、過去の旅行記を読むことで、海外旅行に行きたくても行けない辛さを和らげることができました。

自分が旅行に行けない代わりに、誰かが昔に記した旅行記を読んで非日常を追体験する、ということを頻繁にするようになりました。

 

色々な旅行記を読み漁る中、とりわけ奇抜な旅を重ねる人を見つけました。

ノンフィクション作家の高野秀行さんです。

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットー*1としており、

その言葉の通り、読むだけでハラハラドキドキさせる旅を繰り広げています。

また、ただ探検をするだけでなく、歴史や情勢を詳しく調査し考察されています。教養本に近い印象があり、成程とスッキリした読後感を得られるのもすごいなと感じます。

これまで30冊以上の著書があり、読めていない本がまだまだあるのですが、その中から2冊を紹介します。

 

謎の独立国家ソマリランド

正確なタイトルは「謎の独立国家ソマリランド——そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア——」。

冒頭に書いたように、海外旅行に行けない日々が続く中、無性に旅行記が読みたくなって最初に手にとった一冊でした。

 

アフリカのソマリアは、一時期は海賊のニュースで頻繁に名前が挙がっていたこともあり、混乱した国というイメージが強いと思います。

実際に国家は分断状態なのですが、そんな中に、ソマリランドという非常に安定した独立国家が存在しているそうです。

 

文中で「リアル北斗の拳状態」と表現される危険な国に、

数少ない情報を頼りに潜入し、ソマリランドを探っていく。

私が過去に読んだ中で、最もスリリングな旅行記でした。

 

さらに、単にユニークな国として紹介するだけでなく、

何故混乱した国家の中で平和的で安定した独立国家が続いているのか、深く調査と考察がなされています。

その要因の一つに、氏族に基づいた高度な自治があるそうです。

本では、氏族について源平合戦に例えて説明されており、面白かったですし、かつ分かりやすかったです。

 

また、文中で取りあげられた、各国から承認されないほうが平和が続く、という意見はとても興味深かったです。

国家として承認されることで、援助資金が集まるようになりますが、それが却って汚職を引き起こす可能性を指摘しています。

グローバル化が進む中、スタンダードに無理矢理組み込まないほうが良いこともある、と考えさせられました。

 

読んでいて手に汗握る旅行記であり、同時に「幸せな国とはどういう姿なのだろうか」と深く考えさせてくれた、大変刺激的な一冊でした。

 

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西南シルクロードは密林に消える

砂漠地帯を抜ける一般的なシルクロードとは異なり、中国からミャンマーを抜けてインドに至るルートがあったそうです。

現在はジャングルに覆われ、しかも反政府少数民族ゲリラが支配する領域をも含むこの西南シルクロードを、陸路で走破するという旅をやり遂げたのが本書です。

 

反政府ゲリラの協力を得ながら、時にはゾウにも乗って歩みを進めていく様子は、「ソマリランド」同様にスリル満点でした。

それに加えて、現代社会とはほとんど隔てられた現地の人々の生活様式も、とても心に残りました。

 

アジアの秘境でどのような人々が暮らしており、またどのような問題を抱えているのか、

普段は全く気付けないこれらの内容が、とても身近に感じられる一冊でした。